活動報告

熊本県への視察

筆者:高橋まさひこ
2019.10.09

熊本県家庭教育支援条例について

令和元年7月31日に県議会の議員の方々と熊本県庁において、全国で初めて制定された「熊本県家庭教育支援条例」について勉強させていただきました。

当日は、この条例に直接関わった溝口幸治県議会議員から条例制定の目的、経過、効果について説明を受けました。

もともと、熊本県は教育熱心な県で、江戸時代の藩校「時習館」で藩士子弟や庶民も広く学ばれた。また、医学校「再春館」では全国から医術を学ぶ人材が集まり、明治には旧制五高が置かれたところである。少し古いが池田隼人や佐藤栄作も五高の出身者である。

熊本教育委員会では、家庭教育の重要性を考え、平成12年に家庭教育10か条を作り家庭教育の啓発が行われていた。こうした活動をベースに平成19年に「こども輝き条例」も制定されたところである。

時に、平成18年12月15日、昭和22に制定された教育基本法が半世紀以上経過した中で改正された。この新しい教育基本法では家庭教育の重要性を第10条に規定され、その2項には「国、県、市町村は家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会および情報の提供、その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない」と努力義務が課せられた。

溝口議員は、この10条2項の努力義務に注目し、戦後の少子化や核家族の進行、保護者と地域のつながりの希薄化など社会が大きく変化した中で、子供への過保護、過干渉、放置や虐待など家庭教育の低下が顕著になり、熊本教育委員会のこれまでの取組や議員としての使命、議員自身の哲学などが行動としての動機となったことを述べられた。

条例制定にあたっては、現場主義に徹し、講演会や勉強会で知見を深めた中で、小中学校の先生との意見交換。その中では家庭教育の重要性であるとの生の声。PTAの方々からは五里霧中の中で子育てをする保護者の切実な思い。一般的に言われる「家庭まで行政が」と違い、特にPTA(いわゆる保護者の方々)から積極的に行政が家庭教育に関わってほしいとの強い要望が出る状況があった。

そして、平成24年6月に超党派で「熊本県家庭教育支援基本条例策定検討委員会」を発足し、同年12月の定例会で全国初の条例が可決され、翌年4月1日施行されることとなった。

特徴的なのは、教育委員会と議会が一緒になって、家庭教育の進捗状況をチェックし、関連部局に提言をする仕組みが確立されている。また、条例制定にあたってのパブリックコメントで「行政が家庭のプライバシーに関わるべきでない」との意見もあり、自主的参加を大前提として取り組まれている。また、一方的な進め方はせず、対話形式によるワークショップで進められている。「親の学びプログラム」には6万5千人が自主的に参加され、毎年参加者が増加する傾向にあるとのこと。

このプログラムを通じ「子育て途中で、子供が誕生した喜びを再び思い出し、新たな気持ちで愛する子供を育てる動機付けとなった」「今までの子育てを省みて、注意ばかりで褒めることが少なかった。これからはしっかりと褒めよう」など、保護者の意識改革が自ら作り上げるという効果など、大きな影響が出始めている。

大変ご多忙な溝口県議会議員や議会事務局、教育委員会の皆様には大変お世話になり、貴重な勉強の機会を与えて頂いたことに心より感謝を申し上げます。

島根県では同条例が制定されていませんが、少しずつ条例制定の都道府県も出始めています。さらに知見を深め、島根県の子供たちが社会的マナーを身に着け、自立心を持った人として育つよう努力して参ります。